むつぬま雑学研究室新館

交通関連の考察記事を中心にいろいろ書いていきます。鉄道時々航空(予定)、2019年9月5日よりYahoo!ブログから移転。

24. 【大阪発24時の理由は?】JR西日本、終電繰り上げへ【サンライズへの影響は?】

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10月24日、JR西日本から24時を目安にそれ以降の深夜帯の運転本数を見直すことを検討することが発表されました。早ければ2021年春のダイヤ改正で実施される見通しです。

www.westjr.co.jp

主な理由としては、

  • 保守作業の時間を確保し作業員の働きやすい環境を整える
  • それにより作業日数を減らし、働き手不足に対応する
  • 数年前に比べて利用客の帰宅時間が早まっている

などを挙げています。これについて、多方面から比較・考察してみましょう。

1. 「大阪発24時」を目安とした理由

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関西圏においても新幹線連絡は重要である。

JR西日本の発表によると、大阪発の終電を24時に繰り上げることで年間10%ほど作業日数を減らすことが期待できるとされています。24時はあくまでも例ではありますが、なぜ24時としたのか、それは最終の新大阪行き新幹線との接続をとるためでしょう。現在のダイヤでは東京発新大阪行き最終「のぞみ265号」が新大阪23:45着、鹿児島中央発新大阪行き最終「みずほ612号」が新大阪23:37着となっているので、逆に言えばそれくらいまでは必要でしょう。現状のダイヤではここから新快速に乗り換えることで姫路・野洲までは新快速が通過する途中駅を含めて行くことができます。また、大阪環状線各駅にも行ける他、天王寺大和路線に乗り換えて王寺まで、または阪和線に乗り換えて鳳まで行くことができます。いずれも終着駅到着は25時かそれを少し過ぎるくらいです。これより遅くまで運転しているのは

の3方向となっていて、特にJR神戸線については最終の各駅停車でも西明石まで行くことができます(西明石着は25:38で、現在は日本一遅い)。そのため、このあたりの電車は削減の対象になる可能性が高いでしょうし、これ以外でも全区間で完全に運転を終える時間を前倒しするために運転区間短縮もあり得そうです。王寺、鳳あたりは初電が朝6:00発の新幹線に接続できるので終電に関しても接続時間の見直し程度で済むとは思われますが、姫路や野洲まで最終の新幹線接続を取るかは微妙なところですし、まして末端部の新快速通過駅はかなり厳しいのではないでしょうか。また、大阪方面に向かう電車についても、これに合わせる形で見直されるでしょう。

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2. JR線と競合する私鉄各線の終電は?

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関西圏は私鉄も強く、近鉄電車は大和路線などと、阪神電車JR神戸線と競合する。

その一方でJR線と関西大手私鉄5社を競合区間で比較してみると、多くの場合JR線の方が終電が遅くなっています。計画通りに繰り上げても私鉄と同じくらいか、それでもまだJR線の方が遅いくらいかもしれません。

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関西大手私鉄5社はいずれの路線も遅くとも25時までには全線で運転を終了するダイヤとなっているため、「終電が遅いJR」のイメージが崩れることはなさそうです。なお神戸電鉄神戸市営地下鉄には25時を過ぎる電車が一部ありますが、これもJR線との接続という要素が強いです。

※2020年9月17日訂正
新今宮→和歌山のJR阪和線終電を22:58発と表記していましたが、23:39発に訂正しました(和歌山行き終電各駅停車が発車した後も、後続の日根野行き快速で追いかけることが可能です)。これにより新今宮→和歌山も南海本線より遅いことになります。

3. それではJR東日本の首都圏各線と比較すると...?

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JR東日本の近距離電車は終電がかなり遅いことが多い。

JR東日本の場合、近距離電車(通称E電)である山手線、京浜東北線、中央線快速電車、中央・総武緩行線などで私鉄などと比べても全体的に遅く、関西圏と比べても遅めな傾向にあります。中でも中央線(車両は快速電車だが運転系統の関係で各駅停車)の高尾行き終電は25:37着と非常に遅く、その後の三鷹行きに関しては新宿発の時点で25時台となっています(しかも日によっては非常に混雑します)。その一方で、JR西日本の新快速のように上位種別に相当する中距離電車が都心の終電間際まで運転されることはなく(とはいっても運転区間の関係で終着駅到着はかなり遅いですが)、24時以降はほぼ各駅停車で占められています。その影響で一部やや早めな区間もあり、埼京線は新宿23:55(11/30以降は24:00)発の川越行き終電で池袋~赤羽を除き途中駅までの電車もなく運転終了、他路線で代用できない駅を持つ総武快速横須賀線も最終の新幹線に接続するかどうかくらいが終電となっています。常磐線快速電車は遅くまで取手行きがあるのにどうしてこうなった...

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また首都圏においても終電はJR線の方が私鉄よりも遅い傾向にあります。とはいえ25時台まで運転している路線も少なくはなく、条件次第では私鉄の方が遅いこともありますし、私鉄同士の比較でも首都圏が若干関西圏よりも遅いといったところでしょうか。小田急や京王のように、終電を逆に繰り下げたところもあります。

4. それ以外の地域では?

JR東海の名古屋地区だと終電自体は最低でも最終の新幹線接続まではありますが、運転区間は短めで終着駅到着時刻が25時を過ぎるのは東海道線上り豊橋行き終電(名古屋23:57発)のみとなっています。その一方、名古屋市営地下鉄では東山線で金曜日のみ終電の延長を行っており、25:15まで運転されて日本一終電が遅い地下鉄となっています。

JR九州では博多・小倉近辺の普通列車や都市間連絡特急列車で25時を過ぎて運転されるものが見られましたが、2018年春のダイヤ改正で深夜・早朝の列車が大幅に削減され、ごく一部を除き消滅してしまいました。この改正ではこれまで大分から山陽新幹線の始発・終電に接続できていたのが中津までしか行けなくなるなど、新幹線接続にも影響が出ているので、今回のJR西日本の比較対象になるかもしれません。

5. もしかするとサンライズにも影響が?

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サンライズはJR4社が関係するため、ダイヤの変更は難しいか?

この発表で密かに注目されているのが、上りの「サンライズ出雲・瀬戸」のダイヤがどうなるかです。このままのダイヤで運転すれば大阪での発車時刻(現在は24:34発)が他の電車よりかなり後になることが予想されますし、結局終電を早くする意味がないのではという声もあります。大阪を通過して夜の停車駅は三ノ宮までとすればよいという声もありますが、大阪止まりの電車があることを考えると微妙でしょう。

その一方でサンライズも30分程度前倒しすればいいという案もありますが、それはそれで問題があります。停車駅をそのままで30分程度前倒しすると、静岡(現在は4:40発)と富士(現在は5:10発)の発車が普通列車に比べてかなり早くなってしまいます。現時点でも約20分早いので、さすがに効率が悪すぎる気がします。仮に前倒しする場合、静岡と富士は通過して、逆に京都は停車なんてこともありそうです。

 今回は以上です。かなり久しぶりでかなり長くなりましたが、ありがとうございました。