むつぬま雑学研究室新館

交通関連の考察記事を中心にいろいろ書いていきます。鉄道時々航空(予定)、2019年9月5日よりYahoo!ブログから移転。

41. 【いよいよ開業目前】2022年3月相鉄・東急ダイヤ改正続報まとめ

前回の記事では、相鉄・東急直通線(相鉄新横浜線・東急新横浜線)について運行概要からの考察をしましたが、その後2月27日に相模鉄道から改めてダイヤ改正のプレスリリースが出ました。また、時期を前後して相鉄線東急線の各駅における新時刻表も公開されています。今回はここから新たに分かった点について見ていきましょう。

su62numa381.hateblo.jp2月27日発表の相模鉄道プレスリリースはこちら

1. 相鉄線視点での考察

1-1. 急行の運転は休止、その一方でいずみ野線特急は復活

二俣川駅から先の利用客には欠かせない、相鉄らしい種別ではあったが…

今回の相鉄線内列車の変更で最も大きい変化と言えることとしては、相鉄本線横浜駅から海老名駅までを横浜駅二俣川駅間無停車、二俣川駅海老名駅間各駅停車で運行してきた急行の運転がついに1本もなくなることでしょう。相鉄線では海老名駅まで運転される列車のほぼ全てが急行という時代が長らく続いていましたが、2014年の特急運転開始を境に一時は日中の運転がなくなるなど存在が薄れ、近年はJR線直通列車や快速に置き換わる形でも減少傾向にありました。2021年の改正で再び日中の運転がなくなり、現在は朝夕時間帯に遠近分離を目的として運転される形となっていましたが、今回の改正で朝夕時間帯においても朝の上りは通勤急行、それ以外は快速に変更され、急行は時刻表や路線図のどこにも見当たらなくなってしまいました。これにより西谷駅には全列車が停車することになり、東急線直通開始による分も含めて西谷駅の停車本数は大幅に増えています。

ただし、扱いとしては「廃止」ではなく「休止」とされており、今後混雑状況などによっては現在の形のままで復活する可能性も考えられます。また、今回の改正では急行と入れ替わる形で過去に休止となった種別が復活します。それはいずみ野線内における特急であり、今回は東急線直通列車での設定となります(朝の上りで運行されている通勤特急東急線直通に変更)。2014年に特急が新設された際にはいずみ野線に乗り入れて横浜駅湘南台駅で運転される列車も設定されましたが、いずみ野線内では追い抜きができるいずみ野駅しか停車せず、利用客の多い駅を通過してしまうこともあり減便を経て2019年のJR線直通開始と同時に休止とされました(ただし、平日朝時間帯上りに限り通勤特急を新設し、いずみ野線内での通過運転を継続)。しかし、今回の東急線との直通運転開始で平日夕方時間帯を中心にいずみ野線内の運転本数が増えるため、特急が復活する形となりました。いずみ野線特急は平日は朝時間帯下りと夕方時間帯の上下線で毎時1~2本程度が運転され、土休日は若干数のみ運転されます(平日朝時間帯上りは引き続き通勤特急を運転)。

従来とは全くの別物となって復活するいずみ野線特急。

1-2. 横浜駅西谷駅間の各停を新設するも、平日朝夕時間帯の横浜駅発着は減少

今回の東急線乗り入れにより、日中時間帯は東横線直通と目黒線直通が毎時2本ずつ、朝夕はさらに多い本数が新たに都心直通となります。このうち一部は純増(日中時間帯の目黒線直通などが該当)となりますが、多くの列車が横浜駅発着からこちらに回される形となります。これにより特に西谷駅から横浜駅方面の利便性が低下するため、横浜駅西谷駅間のシャトル列車が終日、大量に新設されます。シャトル列車は主に東横線直通列車と西谷駅で接続する形で運転され、日中時間帯は毎時2本、平日の朝夕時間帯は過半数横浜駅発着各停が西谷駅までの運転となります。

日中時間帯の1時間当たりの運転本数

ただし、それでも新線開業で利用経路の分散が考えられることから、平日朝夕時間帯においては横浜駅発着本数が減らされ、朝時間帯は最大で毎時24本から20本、夕方時間帯(横浜駅発18・19時台)は毎時18本から16本に変更されます。また、朝夕時間帯は多くの各停が西谷駅で乗り換えとなる点、これまで日中時間帯を除き10両編成が中心だった海老名駅方面でも目黒線直通で8両編成が増える点も注意が必要です。その一方で平日日中時間帯や土休日は毎時12本で維持され、相鉄としては都心勤務でも買い物などは横浜駅周辺へという姿勢を示す形となっています。

2. 東急線視点での考察

2-1. 東横線では各停が減少、渋谷駅で折り返す急行が大幅に増加

似たような車両でも東横線目黒線では細かいところが異なる。

東横線から新横浜駅相鉄線方面への直通列車は全列車が10両編成となっており、東横線内では各停のみ停車する駅に10両編成が停車できないため全列車が急行とされています。また、直通列車は日吉駅まで他の東横線列車と同じ線路を走行するため、運転区間がほぼ重複する菊名駅折り返しの各停が大幅に削減され(日中時間帯は2022年改正で削減済み)、直通列車に置き換わる形となっています。これにより各停の本数がかなり減少し、その分急行の本数が増加しています。

日中時間帯の1時間当たりの運転本数

  • 特急:4本(全てFライナーとして運転)
  • 急行:6本(相鉄線直通2本、渋谷駅折り返し2本)
  • 各停:8本(渋谷駅折り返し2本)

また、急行の本数増加に伴い上りでは平日朝夕時間帯に祐天寺駅での追い抜きが増えるなど、緩急接続のパターンが大幅に変更されることから、従来はごく少数のみの設定だった渋谷駅で折り返す急行が日中時間帯以降に毎時2本程度設定されています。特に平日の夕方時間帯は10両編成が集中して充当されており、2023年度中に導入が予定されている有料着席サービス「Qシート」の対象となることが予想されます。

2-2. 目黒線では急行のほぼ全列車が新横浜駅方面に乗り入れ

長らく当たり前だった表示だが、今後はどの形式でも貴重なものになりそうだ。

全駅が8両編成対応となり両数の制約がない目黒線においても相鉄線に直通する列車は多くが急行とされており、日中時間帯は都営三田線から直通してくる急行が相鉄線まで直通し、東京メトロ南北線から直通してくる急行が新横浜駅で折り返す形となります。これにより、日吉駅で折り返す列車はかなりの数が残るもののほとんどが各停となり、日吉駅行きの急行はごく少数となります。これまで始発駅だった日吉駅では今後は座って行くか急いで行くかのどちらかを選択する形となりそうです。

3. その他(両方に関連する内容など)

3-1. 相鉄線の女性専用車は別々の号車に、目黒線系統では実施せず

JR線直通の際に4号車で統一できていれば話は違ったかもしれないが…

こちらは本ブログでは散々取り上げてきた話になりますが、相鉄線東横線の直通運転においては両者で逆側の先頭車両で実施されている女性専用車を関連する他社線も含めどうやって調整するか、また相鉄線目黒線の直通運転においてはこれまで女性専用車を実施していなかった目黒線及びその直通先で新規導入されるのかなどが注目されてきました。11月に直通運転の概要が発表された際には調整中で今後決まったら発表するとされていましたが、開業まで1か月を切った今回の発表でようやく決まりました。結果としては相鉄線以外に影響が出ないように相鉄線が各乗り入れ先に合わせて位置や時間帯を別々に設定するという形になりました。

相鉄線の女性専用車に関する変更点

  • 東横線直通のみ上り先頭1号車で始発から実施する
  • 目黒線直通は最混雑時間帯であっても一切実施しない
  • 横浜駅行き(8両編成含む)とJR線直通は号車・時間帯とも変更なし

このことから、相鉄線内では以下のようになる点に注意が必要です。

  • 東横線直通と横浜駅行き・JR線直通では同一方向でも逆の位置になる
  • 東横線直通では実施するが横浜駅行き・JR線直通では実施しない時間帯がある

1つ目の同一方向で行先によって設定号車が逆になる点については他の路線では例を見ないものであり、例えば東京メトロ半蔵門線や都営新宿線では両側の先頭車両に女性専用車のステッカーが貼られているものの進行方向によってどちらで実施するかが異なるため、駅側の案内は片側のみとなっています。特に相鉄線の場合、横浜駅方面は乗り換えが増えるのにも関わらずこのような形になったことで、利便性への影響が懸念されます。なお、2つ目については既に東横線に乗り入れている東武東上線西武池袋線においても前例があるものとなっています。東急においては始発から実施して時間になったら一斉終了が分かりやすいと考えているのでしょうか?

今回発表が遅れた理由としてはこれまでの乗り入れでは例を見ないほど調整が複雑であったことが挙げられます。ただ単に関連する事業者数が多いということもありますが、それ以上に相鉄線東横線に合わせると横浜駅への影響が大きいが、東横線相鉄線に合わせても菊名駅への影響が大きいという事情があります。特に東横線では導入当初は現在の相鉄線と同じ位置としたものの、階段が1か所しかない菊名駅などで混雑の原因となったことから1年後に設定号車を変更した経緯があり、相鉄線に合わせることは絶対に受け入れられなかったものと思われます。また、相鉄線では8両編成でも実施していることから目黒線やその直通先である都営三田線東京メトロ南北線埼玉高速鉄道線において女性専用車の新規導入があるかについても注目されましたが、こちらについては相鉄線内も含めて実施しない形となりました。この点については、特に都営地下鉄においてはつい先日大江戸線において新規導入され、三田線についても直通先と調整中とされていたことも考慮すると、個人的には五分五分程度の確率で新規導入もあり得るのではないかと考えていましたが、やはり都心部の6両編成で女性専用車を入れるのはかなり抵抗があったものと考えられます(現在6両編成で女性専用車のある路線は首都圏では東武野田線横浜市営地下鉄ブルーラインつくばエクスプレスの3路線のみ、また8両編成のみで実施するのは南北線埼玉高速鉄道線の車両が6両編成ばかりであることから現状では考えにくい)。

複雑な乗り入れが理由なのか、目黒線系統への女性専用車導入は回避された。

www3.nhk.or.jp

3-2. 車両運用の考察(相鉄20000系・21000系など)

今回の発表に先立って、相鉄からは新ダイヤの全線時刻表も発表され、両数や運行番号についても明らかになっています。発表された内容から、新ダイヤでは以下のように運用が分けられるものと考えられます。

相鉄の運行番号一覧

これまでE233系の運用だった運行番号が20000系の運用に変わるなど、細かい変化も多い。

注目点としては、目黒線直通運用について途中で運行番号を変更して三田線南北線の両方に乗り入れると思われるものがあることが挙げられます。これまでは東急車であっても三田線に乗り入れる運用と南北線に乗り入れる運用は分けられていましたが、今後はこれが改められ、運行番号の奇数・偶数を1組として両方に乗り入れる形になるのでしょうか。ただしその場合でも、現状21000系7編成に対し目黒線直通7運用となるので、予備がなくなることが予想されます。過去に私自身のツイートで相鉄20000系・21000系の運用をまとめてありますので、そちらも参照してください。

さらに時刻表を見ると、中には横浜駅発着なのに運行番号の末尾がKになっている列車がいくつか見られます。このことから、東急車も相鉄線横浜駅に入る列車に使用される予定であることが分かります。JR線直通の際はダイヤ乱れ時を除きE233系横浜駅いずみ野線に入る運用は組まれませんでしたが、今回は車両ごとに走行できる区間が異なる制約があるためか、このような運用も一部組まれることとなりました。特に土休日は平日に比べて直通列車の本数が少ないこともあり、東急車が1日に12回も横浜駅に乗り入れます。

横浜駅に乗り入れる東急車の時刻一覧

平日ダイヤ

  • 61K(各停)海老名10:26発→横浜11:16着、横浜11:20発→ 西谷11:33着(各停)

土休日ダイヤ

  • 60K(快速)海老名05:52発→横浜06:10着横浜06:20発→湘南台06:53着(快速)
  • 26K(各停)湘南台06:33発→横浜07:14着、横浜到着後回送
  • 34K(各停) 西谷07:32発→横浜07:45着、横浜07:50発→湘南台08:31着(各停)
  • 26K(各停) 西谷07:52発→横浜08:05着、横浜08:10発→ 西谷08:23着(各停)
  • 22K(快速)海老名07:43発→横浜08:17着横浜08:28発→湘南台08:59着(快速)
  • 11K(快速)海老名08:20発→横浜08:56着横浜09:09発→海老名09:44着(快速)
  • 63K(各停) 西谷09:33発→横浜09:46着、横浜09:59発→海老名10:34着(快速)
  • 29K(各停) 西谷09:44発→横浜09:57着、横浜10:09発→海老名10:36着(特急)
  • 63K(快速)海老名10:43発→横浜11:18着、横浜到着後回送
  • 18K(快速)海老名15:23発→横浜15:57着、横浜16:00発→湘南台16:41着(各停)
  • 55K(快速)湘南台20:36発→横浜21:11着、横浜21:15発→湘南台21:58着(各停)
  • 55K(各停)湘南台22:15発→横浜23:00着、横浜23:07発→湘南台23:48着(各停)

かなり長くなりましたが、今回は以上です。ありがとうございました。