35. 【田園都市線は優等中心に】2021年3月東急ダイヤ改正を考察してみる
1月26日、東急電鉄から令和3(2021)年3月のダイヤ改正の概要が発表されました。今回は3月13日に全線一斉で改正が実施されます。また、東急電鉄と相互直通運転を行う東京メトロ、東武鉄道、西武鉄道でも同日にダイヤ改正の概要が発表されています。今回は、東急線と直通先の各路線で大きく変化するところについて見てみましょう。
1. こどもの国線を除く全線で15~30分程度終電繰り上げ
ホームドアなどの設備増加に伴う保守業務量の増加などに対応するため、東急線全線で深夜帯のダイヤが見直され、こどもの国線を除く全線で終電時刻が15~30分程度繰り上げられます。また、直通運転を行う東京メトロ半蔵門線、副都心線、南北線などの他社線でも合わせて終電時刻の繰り上げが行われます。今回の改正により、渋谷や目黒といった都心側のターミナル駅を発車する東急線各線などの終電は以下のように変更されます。
特に現状ではかなり遅くまで運転されている平日の東横線や田園都市線の終電が大幅に繰り上がり、平日と土休日の終電がほぼ同じになっていることが分かります。また、相互直通運転を行う半蔵門線、副都心線、南北線をはじめとする東京メトロ各線でも東急線ほどではないものの平日を中心に終電が繰り上げられますが、都営地下鉄では微調整のみにとどまる予定とされています。
2. 田園都市線、大井町線で日中の運転パターンを大幅に変更
今回のダイヤ改正では、深夜帯以外の時間帯でも、日中時間帯(10時台~16時台)を中心に利用動向の変化に合わせて運行ダイヤの適正化が実施されます。特に大きく変化するのが田園都市線と大井町線で、以下のように1時間あたりの本数が変化します。
- 田園都市線渋谷発:急行4本準急2本各停8本→急行3本準急3本各停6本
- 田園都市線中央林間発:急行6本準急2本各停6本→急行6本準急3本各停6本
- 大井町線:急行4本各停10本→急行3本各停9本(青、緑の区分は不明)
これにより、以下のように変化することが読み取れます。
- 田園都市線、大井町線とも30分サイクルから20分サイクルに変更
- 大井町線急行は全て中央林間まで乗り入れ
- 溝の口~長津田の急行通過駅は毎時6本しか停車しない
- 長津田~中央林間は本数が増え、渋谷~二子玉川と大井町線は減る
- 半蔵門線の本数は変化しないため、日中の渋谷折り返しは取りやめ
特に太字で示した部分についてはかなり意外でしたので、詳しく見ていきましょう。
2-1. 東急で20分サイクルは異例
田園都市線においては、2003年の東武線との直通開始で急行4本と各停8本の体制が確立され、以降も大井町線急行の乗り入れや日中時間帯の準急運行開始をはさみつつも15分や30分単位でのサイクルを基本としていました。そこから一転、今回の改正では運行本数が全て3の倍数となることから、20分サイクルに移行するものと見られます。
東急の他の路線の1時間あたりの本数を見てみると、
となっており、こどもの国線以外は全て偶数で15分または30分サイクルで回るダイヤとなっています。その一方で中央林間で接続する小田急江ノ島線や長津田で接続するJR横浜線など20分サイクルのダイヤを組む他社線とも接続しているため、そちらとの接続は改善されることも考えられます。
2-2. 優等中心ダイヤも東急では異例
首都圏の大手私鉄各社は主要路線で急行などの速達種別と各駅停車を組み合わせたダイヤを採用しています。速達種別と各駅停車の比率や速達種別の種類は様々ですが、その中でも東急はかつて「都心へ100本」の広告を出すなど本数を重視し、特に各駅停車に多くの本数を割り当てているように見受けられます。特に東横線では各駅停車を日中毎時10本運行しており、他社線に比べて各駅停車重視の色がとても強いです。以下、首都圏の大手私鉄の本線格となる各線についてターミナル駅を発着する日中時間帯の毎時運転本数とそのうちの各駅停車の本数をまとめると、
- 東急東横線(渋谷):18本中10本が各駅停車
- 西武池袋線(池袋):15本中8本が各駅停車(地下鉄直通は10本中6本)
- 東武東上線(池袋):16本中8本が各駅停車(地下鉄直通は4本中2本)
- 京成本線(上野):12本中6本が各駅停車(地下鉄直通は3本中0本)
- 相鉄本線(横浜):14本中6本が各駅停車(JR線直通は2本中1本)
- 京王線(新宿):15本中6本が各駅停車(地下鉄直通は6本中0本)
- 京急本線(品川):18本中6本が各駅停車
- 小田急小田原線(新宿):21本中6本が各駅停車(地下鉄直通は3本中0本)
となります。そんな中、東横線と並んで東急のもう一つの本線である田園都市線では、各駅停車の比率が14本中8本から12本中6本に引き下げられます。準急が各駅に停車する渋谷~二子玉川と長津田~中央林間はまだしも大井町線急行が合流して準急が通過運転を行う二子玉川~長津田では完全に速達種別メインに変わったと見て良いでしょう。東横線は渋谷~横浜を結ぶ以上沿線はずっと都市部ですが、田園都市線は郊外路線としての役割も東横線に比べると強くなりますし、他社線のようにある程度の距離を重視するといった考えでしょうか。とは言え、こどもの国線以外の全線で全駅日中毎時8本を確保していた東急なだけに、かなり意外な変更です。
3. その他の各線でも運行本数を見直し
ここまでに説明した田園都市線、大井町線の他に池上線、東急多摩川線、世田谷線でも日中時間帯の運行パターンが見直され、いずれも平日のみ6分間隔から7~8分間隔に変更されます。さらに田園都市線、池上線、東急多摩川線、世田谷線、こどもの国線では夕夜間の運転本数が見直され、全体的に17時台~18時台は増加、21時台以降は減少となります。また、田園都市線では平日朝の中央林間始発急行・準急が拡充されます。その一方で東横線や目黒線は日中時間帯の運行パターンを変更しない計画となっています。
今回はここまでです。2021年初めての記事となりましたが、今年もよろしくお願いします。