むつぬま雑学研究室新館

交通関連の考察記事を中心にいろいろ書いていきます。鉄道時々航空(予定)、2019年9月5日よりYahoo!ブログから移転。

23. 【新種別・停車駅変更、東急直通後は?】2019年11月相鉄・埼京線ダイヤ改正をたっぷり考察(その2・相鉄線編)

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前回その1に続いて、今回その2では相鉄線内の変化と、それに関連して今後予定されている東急直通によって生じるある問題についても見ていきたいと思います。具体的なダイヤはあまり出ていないので憶測による部分も多いですが、ご了承ください(そもそも東急直通はまだ3年後ですし)。

1. JR線との相互直通運転を開始、特急・快速が西谷に停車

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西谷には旧型の案内が残るも、すっかりきれいになった。

その1でも書いた通り、相鉄・JR直通線が開業して海老名~新宿で相互直通運転が行われます。日中の種別が特急・急行・快速・各停の4つであることに変化はありませんが、JR線直通があるのは特急と各停の2種類となります。また、現在は各停のみ停車する西谷ですが、改正後は分岐駅となるため特急と快速が新たに停車します。これについては発表時に度肝を抜かれた方も多いのはないでしょうか。確かに西谷は分岐駅としての需要ができるものの、駅自体の利用客は隣の鶴ヶ峰に比べてかなり少なく、鶴ヶ峰通過で西谷停車はあり得ないと考えられていました。さらに、特急は横浜の地位を維持するための列車であることと、直通線は海老名・大和~新宿ではどうあがいても小田急線にはあらゆる面で勝てないとされていたため(二俣川~新宿ですら大和経由の方が安い)、直通線は各停が中心で西谷には快速はともかく特急が停車するとは多くの人が考えもしなかったはずです。その1にも書きましたが、直通線の目的が変わってしまった感があるのも原因でしょうか。なお、急行は二俣川~横浜ノンストップのままなので、相鉄本線の主役は結局急行に戻ったようにも感じます。

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直通線特急と入れ替わりでなくなるいずみ野線特急。

さらに、現在特急の運転がない平日夕方時間帯においても直通線特急が運転されます。特急ばかり20分間隔(日中パターン最後となる新宿発16:03の後は新宿発23:14の最終を除き全て特急)なので現在のダイヤパターンに何らかの形でねじ込むことが予想されますが、どうなるのでしょうか?また、日中運転されてきた湘南台~横浜の特急が改正でなくなり、特急は全て海老名発着となります。元々本線特急に比べると存在が中途半端で、当初は8両編成だったりいつの間にか1時間間隔に減らされたりとあまり人気はなかった感がありますが、やはりいずみ野線内で停車駅を絞るのはきついものがあったのでしょうか?

2. 平日朝のいずみ野線に上位新種別登場、いずみ野線は大躍進?

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現在は各停中心のいずみ野線だが、上位種別が少しは増えるか?

今回の改正では、平日朝ラッシュ時間帯に2つの種別が新設されます。通勤特急と通勤急行であり、いずれの種別も鶴ヶ峰と西谷に停車するのが特徴となっています。いずれも湘南台発横浜行きで、通勤特急いずみ野線内はいずみ野のみ停車、通勤急行は西谷まで各駅に停車となっています。現時点で時刻が公表されているのは通勤特急4本と通勤急行5本で、時刻は以下のようになっています(通勤急行については、一部海老名発も運行される予定です)。

現在の平日朝ラッシュ時間帯のいずみ野線は各停のみなので、湘南台からであれば横浜まで座ってかつ速く行くことができるようになるのは大きいでしょう。疑問点としては、今回西谷~横浜の各停は設定されるかです。快速も含め鶴ヶ峰、西谷停車は各停が分断されても利便性を損なわないためだと思っていましたが、JR線直通が特急中心となったため、予想が難しくなりました。そもそもプレスリリースにはそのようなことは書かれていませんし、海老名発の通勤急行とともにどのようになるのか注目されます。

3. 女性専用車が横浜行き最後尾の車両に変更、下り夕方以降は取りやめ

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11000系では4号車のみ全てのつり革が車端部と同じ高さだが...?

現在の相鉄線では、平日の以下の列車の4号車が女性専用車となっています。

  • 横浜着7:00~9:30の上り全列車
  • 横浜発18:00以降の下り全列車

しかしながらJR線から直通してくるE233系7000番台は10号車が女性専用車となっており、どちらに揃えるか、また上り・下りの方向が両者で逆であるため時間帯や区間がどうなるかが注目されていました。今回のプレスリリースでこれについても発表され、号車についてはJR埼京線と同じ10号車(8両編成は8号車)となった上で、時間帯や区間は以下のように変更されました(弱冷房車については逆に相鉄線に合わせているため、変更はありません)。

  • 横浜着7:00~9:00の横浜行き全列車
  • 大崎着7:20~9:30のJR線直通全列車(大崎で終了)

やたら時間の長い上に他社線と違って各停だろうが8両編成だろうが避けられない夕方以降の女性専用車がなくなったことで評価は高いと思いきや、Twitterなどを見ている限り評価はあまりよろしくありません。というのも上り最後尾の車両に変わることで、海老名などでは改札口の目の前が女性専用車となってしまうからです(小田急江ノ島線の藤沢も同じ状況ですが、こちらは全列車ではないためかそこまで不満は聞きません)。そのため、これまで相鉄線ではたとえ横浜到着時点で最も空いていても10号車を女性専用車とはせず、その代わり横浜で2カ所の出口の中間となり、乗車率の谷に当たる4号車が女性専用車とされました。海老名では改札口の増設が進められていますが、完成する来年までは駆け込み乗車が問題になるのではという懸念も多く、かつての東横線の「菊名問題」の再来だという声も上がっています。というか海老名、横浜特急の大幅減も予想されるし下手したら今回の改正で一番の負け組では...

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菊名問題とは、東急東横線菊名において階段が横浜寄りの端にしかなかったことと東横線の女性専用車が導入当初横浜方先頭車の8号車であったことが原因で生じた、駆け込み乗車・車内トラブル・積み残し・7号車の混雑などの諸問題の総称です。菊名横浜線の乗り換え駅で東海道新幹線との接続にも関わる重要な駅でもあったこと、そして当時は各停を除き平日終日全列車が対象だったため利用客からはかなり不満だったそうです。結果として、東横線の女性専用車はわずか1年で編成中央の5号車に変更され、時間帯も朝の上下線と夕方以降の下りのみに縮小されました(現在は副都心線乗り入れに伴い、各停含む朝のみ1号車での実施に再変更されています)。この問題の影響か、関東圏で女性専用車を終日実施した例は後にも先にもこれだけです(なお関西圏、特にJR西日本には全く効いていない模様)。ちなみに今回の相鉄線の変更で関東圏で朝以外の実施は京王線(夕方以降は特急・準特急のみ)、埼京線(深夜)、つくばエクスプレス(夕方の下り全列車)の3路線に、中間車での実施は横浜市営地下鉄ブルーライン(6両編成の4号車)、京浜東北根岸線(10両編成の3号車)の2路線となります。

海老名以外に影響を受ける駅としては、階段やエレベーターが海老名寄りにしかない鶴ヶ峰や平沼橋が挙げられます(平沼橋は横浜にあまりにも近いので降りる人の方が多そうですが)。また、いずみ野線内は逆に階段が中央部にある駅が多く、4号車から10号車に変わったことで改善されたと言えます。端の車両で時間帯も朝のみとなった(余談ですが海老名発新宿行き最終は新宿着が23時を過ぎ、埼京線内深夜の女性専用車実施時間帯に入りますが、この列車のみ対象外とされています)ことで、他社線と同水準となりましたし、3年後の東急線との直通運転も問題ない...と思いきや、かなり複雑な問題が生じてくるのです。

4. 相鉄・東急直通線開業後はさらに複雑になるが、どうなる?

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相鉄・東急直通線開業時にはもういないであろう新7000系

まず相鉄・JR直通線開業時点での関連各路線の編成は、以下のようになります。ここに書ききれない内容も一部ありますが(東武東上線の8両編成は和光市~志木のみ、西武線の8両編成は池袋線の地下鉄直通列車以外女性専用車の実施対象外など)、気になる方は各自調べながら補ってください。なお目黒線系統については現在全て6両編成ですが、相鉄線と直通する際に一部が8両編成となり、東急3020系が既に8両編成で製造されているのでこれを元に暫定編成としています。

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今回の変更で相鉄線埼京線、そして東横線などの弱冷房車が渋谷・新宿・池袋で南側から2両目で全て一致し、現時点で増結編成等の関係で違う車両を指定している西武線内列車を除き3年後に再びずらす必要はなくなりました。目黒線系統については、相鉄線の8両編成か他の各線のどちらかが1両ずらせばそろいます(東横線と揃えるために相鉄線以外が1両ずらす可能性の方が高いでしょう)。

しかしながら直通に当たって最大の問題点となるのが、相鉄線埼京線東横線などで女性専用車の位置が真逆であることです。考えられる選択肢としては、
(1)相鉄線埼京線などが1号車に変更
(2)東横線副都心線などが10号車または8号車に変更
(3)相鉄線内では東急線直通のみ1号車に変更し、列車によりバラバラ
の3つでしょう。ですが、いずれにしてもかなり問題があります。

(1)相鉄線埼京線などが1号車に変更する場合

この場合、相鉄線では希望ヶ丘や和田町が横浜寄りにしか階段がなく、不便を強いられることになります。が、それ以上に問題なのが横浜で関東最大規模とされる2階改札口の真っ正面に来てしまうことです。いくら夕方以降の下りでの実施がなくなり影響を受けるのが到着だけになったからといっても、それはできれば避けたいというのが相鉄側の考えではないでしょうか。また、埼京線でも1号車は最混雑車両とされており、特に新宿で南に大きくずれた5・6番線が使われるのであれば影響は避けられないでしょう。また、板橋も1号車付近にしか出口がありません。

(2)東横線副都心線などが10号車または8号車に変更する場合

この場合、最も反対するのは間違いなく東急でしょう。時間帯こそ縮小したものの、菊名問題が復活してしまいます。相鉄・東急直通線開業後は横浜線とは新横浜でも乗り換えられるようになるため菊名の重要度は下がりますが、東横線からの直通は少ないため一定数は現状通り菊名乗り換えで残るでしょう。また東武東上線西武池袋線のターミナルとなる池袋でも、改札口の真っ正面となります。さらに所沢での接続の関係で他社線への直通がない西武新宿線も変更が予想されるので、本川越でも同様の事態になり、しかもこちらは始発駅なので相鉄線の海老名と同様に駆け込み乗車の原因になるでしょう(全列車ではないので小田急江ノ島線の藤沢に近いかもしれませんが)。

(3)相鉄線内では東急線直通のみ1号車に変更する場合

この場合、相鉄線の東急直通用車両である20000系において複雑な対応をする必要があります。具体的には半蔵門線や都営新宿線みたいに両先頭車に違う内容のステッカーを貼るか、20000系は完全に別運用とし、西谷~横浜には(最低でも平日朝は)絶対に入れないか、この2択となります。しかし半蔵門線や都営新宿線の場合は上下線で違うだけの話であり、同じ方向で違うとなると案内が複雑になることが予想されます。また、20000系を完全に別運用とするのも8両編成はともかく10両編成では難しいでしょう。

このように、いずれにしても相鉄線が割を食うか、副都心線に乗り入れる各線が割を食うか、結局はこの2択となってしまうのです。現在女性専用車のない目黒線都営三田線南北線埼玉スタジアム線も含め、今後の対応が注目されます。

 長くなりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。11月30日を楽しみに待ちつつ、相鉄線を知らない方々にもその魅力を知ってもらえることを願います。

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JR線直通は当分見送られた11000系。今後日の目を見ることはあるのだろうか...?