むつぬま雑学研究室新館

交通関連の考察記事を中心にいろいろ書いていきます。鉄道時々航空(予定)、2019年9月5日よりYahoo!ブログから移転。

30. 【私鉄と逆転?】JR東日本、首都圏の終電を30分程度繰り上げへ

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昨日9月3日、JR東日本は深夜時間帯の利用客減少や線路保守作業員の減少に伴う作業の機械化に対応することを目的として、2021年春から首都圏各線において終電を30分程度繰り上げることを発表しました。終電の繰り上げは昨年にJR西日本の関西圏各線でも発表されており、今回はどのような変化が考えられるか見ていきましょう。

JR東日本の公式発表はこちら

1. 2021年春に東京・大阪のJR線で同時に終電を繰り上げへ

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JR西日本でも10~30分程度の終電繰り上げが予定されている。

昨年からJR西日本が線路保守作業員の「働き方改革」を目的として関西圏各線の終電繰り上げを検討し、つい先日に繰り上げ幅は10~30分程度とすること、東京発最終の新幹線との接続は可能な限り考慮することを軸に2021年春のダイヤ改正での実施が発表されました。その一方でJR東日本は今年に入っても終電の繰り上げには慎重でしたが、社会情勢の変化により特に深夜時間帯において大幅に利用客が減ったこともあり終電の繰り上げを検討、そして今回2021年春のダイヤ改正での繰り上げが正式に決定し、10月には具体的な実施線区や内容が発表される予定となっています。

su62numa381.hateblo.jp

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小田急電鉄で使用されているマルチプルタイタンパー

JR東日本では終電繰り上げに至った理由として、保守作業に大型機械を導入するに当たって準備や後片付けにかかる時間が従来より長く必要になることを挙げています。現在の25時台前半に終電到着、翌朝4時台後半に初電出発というスケジュールでは200分ほどの間合いとなります。しかし、保守作業が大型機械に移行することで従来は各10分ほどだった前後の準備と後片付けにかかる時間が機械を保守基地から移動させたり踏切から搬入したりで30分ほどかかるとされています。そのため、従来と同様の作業時間を確保するためには終電を繰り上げて間合いを240分程度にする必要があると判断され、今回の終電繰り上げが決まりました。作業時間に余裕ができることで、作業員にとっては1日の作業量が増える代わりに休日が増え、「働き方改革」につながります。また、現在はホームドアやバリアフリー設備の設置などで全体の作業量が増えていますが、作業時間を長くすることで作業にかかる時間を短縮することができます。今回の終電繰り上げにより、終着駅到着時刻は25時頃となり、一部の線区では初電の繰り下げも行われる予定となっています。

2. 終電繰り上げで並走私鉄との比較はどうなる?

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京急線JR東日本の路線と様々な区間で競合する。

首都圏では一般的に、JR線は私鉄各線より終電が遅いと思われがちです。JR東日本においては特に電車特定区間内を走る近郊路線において遅くまで運行され、主要路線の駅では25時を過ぎてもまだ電車があることも珍しくありません。とはいえ首都圏では私鉄も終電はそこそこ遅い路線が多く、近年は沿線の魅力を高めるために終電をJR線並みに繰り下げるところも少なくありません。また、私鉄の方が運賃の安さや運転本数などの利便性で勝る区間も多く、競合が発生している区間もあります。そんなJR東日本と私鉄の競合をいくつかの区間において終電の遅さという指標で見てみると、以下のようになります。

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ここ最近の変化としては、2019年11月のダイヤ改正埼京線の終電が5分繰り下げられて24:00となったことと、2020年3月のダイヤ改正で中央線の終電が11分繰り上げられて24:30となったことが挙げられます。上段の2例はJR東日本の方が遅い区間ですが、やはり京浜東北線はかなり遅くまで運行していることがわかります。中段の2例は少し前まではJR東日本の方が遅かったが現在は私鉄の方が遅くなった区間です。新宿→小田原については小田急線の繰り下げ、新宿→八王子については京王線の繰り下げに加えて中央線の繰り上げも重なり終電の遅さが逆転しています。下段の2例は私鉄の方が圧倒的に優位区間で、いずれも経路が遠回りであることもあってJR東日本が需要に応えることが難しい区間であると言えます。ここからさらにJR東日本が終電を繰り上げた場合、さらに多くの区間で私鉄に逆転されて終電が遅いJR東日本というのは完全に過去のものになる可能性もあります。もちろん私鉄も山手線などのJR線との接続の関係で繰り上げになることも考えられますが、JR線だけではなく地下鉄との接続もありますし、特に近年終電を繰り下げた路線で繰り上げるというのはどうなのかという感があります。

3. 具体的にどこの路線が対象になる?

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現時点で25時台まで運行される電車が1本もない総武快速横須賀線

一口にJR東日本の首都圏路線と言っても、路線の性格は様々でダイヤについても大きく異なります。ここでは、

このような3つのパターンに分けてそれぞれに属する路線を見ていきましょう。あくまでも個人的な予想であるため、10月にされる公式発表と大きく異なっても責任を負いかねます。

3-1. 都心を通る近距離通勤路線→行き先別に数本ずつ前倒し?

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2年連続で大幅な見直しが予想される中央線快速。

対象路線の筆頭としては、山手線をはじめとする都心部電車特定区間を中心に走行する通勤電車が挙げられます。環状運転の山手線は事情がやや特殊ですが、京浜東北線中央・総武線各駅停車、中央線快速などでは途中駅で折り返す電車も多数あり、終電についても行き先別にある状況となっています。それぞれの行き先の電車を数本ずつ前倒ししていくことで、どこの行き先に関しても大体25時頃に到着するようになるのではないでしょうか。またこの分類に属する路線の多くは初電も非常に早く、そちらについても見直しがされる可能性が高いと言えます。

3-2. 中距離電車都心部はそのままで末端部を削減?

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中距離電車の終電は都心出発が早く終着駅到着が遅い。

終着駅における終電の遅さという意味では、宇都宮線高崎線東海道線などといった中距離電車の存在も見逃せません。この分類に属する路線の多くは終電が都心部を出るのは日付が変わる前で、それ以降は停車駅の多い近距離電車で補完する形となっています。ですが終電でも行き先はかなり遠く、中でも高崎線の下り終電は高崎到着が25:37と現在全国で2番目に遅い終電となっています。その一方で多くの折り返し列車がある途中駅籠原までの列車は高崎行きの終電の後にはなく、上尾など都心に比較的近い駅ではかなり終電が早くて初電が遅くなっています。宇都宮線東海道線などについても状況は同じで、バランスの悪さが目立ちます。そのため、末端部のみ終電繰り上げや初電繰り下げの対象になり、現在の終電や初電が区間運転になることが考えられます。具体的には宇都宮線の終電は宇都宮行き→小金井止まり、高崎線の終電は高崎行き→籠原止まり、東海道線の終電は小田原行き→平塚止まりとすると終着駅到着が25時頃になります。

3-3. 東京メガループ・郊外路線→終電より初電を見直し?

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武蔵野線などは初電は早いが終電はそこまで遅くない。

この分類に属する路線は初電は他の分類と同じくらい早いですが、終電がかなり早めな路線も多く見られます。JR東日本は一時期京葉線武蔵野線横浜線南武線の4路線を「東京メガループ」と総称してダイヤ改正のたびに強化してきました。このうち東京を始発駅とする京葉線を除けば、初電は4時台からあるものの終電がやや早く、24時を過ぎて運転する電車は少なめです。このような路線で終電を大幅に繰り上げると、他の路線との接続に支障が生じることも考えられます。より本数の減る郊外路線である相模線や八高線なども状況は似ており、このような路線では初電の繰り下げはあっても終電の繰り上げがされる可能性は低いでしょう。

4. 終電の遅い終着駅ランキングはどうなる?

終電の話をすると時々話題に上がるのは、「何線のどこ行きの終電が最も遅いか」です。以下のニュース記事で2017年12月時点での25:20以降まで運行されている終電がまとめられています。当時の山手線内回りの品川行き終電が25:19着であったため(現在は大崎止まりに変更)、それより遅い終電がまとめられています。

toyokeizai.net

これにならって2020年9月現在のダイヤで「終電の遅い終着駅ランキング」を作成してみると、以下のようになります(漏れがあったらコメントでご指摘お願いします)。

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25:20以降に終着駅に到着する終電は16本ある。

25:20以降に終着駅に到着する終電のみをまとめていますが、先述した記事にある2017年12月時点でのデータと比較すると一部変化が見られます。具体的には2018年3月のダイヤ改正で深夜早朝の列車を大幅に削減したJR九州の路線が全てランキングから外れ、入れ替わりで深夜早朝の列車を強化した小田急多摩線などがランクインしています。また、16本中9本をJR東日本の路線が占め、行き先別に複数の電車がランクインする路線もあります。同時に終電の繰り上げを行うJR西日本と合わせて11本が見直しの可能性が高いと言える状況であり、来年の春にはこのランキングの並びも大幅に変わっていることが考えられます。

今回はここまでです。何故か前回の投稿から2日で投稿できましたが、今後は投稿頻度を上げられるように頑張ります。